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最高裁判所第一小法廷 昭和57年(あ)1144号 決定

主文

本件上告を棄却する。

当審における未決勾留日数中三五〇日を本刑に算入する。

理由

弁護人梓澤和幸の上告趣意のうち、第二の三は憲法三八条二項違反をいうが、記録によれば、所論の指摘する被告人の司法警察員に対する供述調書は、任意性のある供述を録取したものと認められるから、所論は前提を欠き、第二の五は判例違反をいうが、所論引用の判例は事案を異にして本件に適切でなく、その余は、憲法三一条、三七条一項、二項違反をいう点を含め、実質は、単なる法令違反、事実誤認の主張であつて、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。

なお、原審が刑訴法三二三条三号に該当する書面として取り調べた水海道電報電話局長作成にかかる取手警察署長宛昭和五七年五月一一日付回答書は、弁護人申請にかかる送付嘱託の対象物(守谷局〇三九三番の加入電話へ架電された電話についての逆探知資料)は存在しないという事実を立証趣旨とするものであつて、原審が右逆探知資料の送付嘱託を行うことの当否又は右逆探知に関する証人申請の採否等を判断するための資料にすぎないところ、右のような訴訟法的事実については、いわゆる自由な証明で足りるから、右回答書が刑訴法三二三条三号の書面に該当すると否とにかかわらず、これを取り調べた原審の措置に違法はないというべきである。また記録を調べても、第一審判決の事実認定を肯認した原判決に誤りがあるとは認められない。

よつて、同法四一四条、三八六条一項三号、刑法二一条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(角田禮次郎 藤﨑萬里 中村治朗 谷口正孝 和田誠一)

回答書

○○局長作成の回答書は、本件に関し、□□警察署長が○○局長に発した捜査関係事項照会書に対するもので、次の内容である。

照会事項 昭和五四年二月二七日午前一一時一六分△△町六一九番地A宅加入電話△△局八―〇三九三へ架電された電話につき逆探知したか否かについての資料中、逆探知をしたことを証明する障害記録テープが貴局に保管されていますか。

回答事項 前記の加入電話への逆探知に関する資料はありません。

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